コラム
介護福祉士の平均年収・給料の手取りは?給料アップのポイントも紹介
介護職の中でも唯一の国家資格である介護福祉士は、安定した需要と専門性の高さから注目される職種です。近年は処遇改善も進み、年収や手取りも少しずつ上昇傾向にありますが、実際の金額がどの程度なのか気になる方も多いのではないでしょうか。額面の給料と手取りの違いや、資格の有無・勤務先による収入差など、把握しておくことで将来設計にも役立ちます。
当記事では、介護福祉士の平均年収・月収・手取り額をはじめ、収入を増やすための方法についても詳しく紹介しています。これから介護業界を目指す方や、転職・キャリアアップを検討している現役介護職の方はぜひ参考にしてください。
1.介護福祉士の平均年収・給料
介護福祉士は、介護職の中で唯一の国家資格を持つ専門職であり、年収アップを目指して資格取得を検討する方も多く見られます。ここでは、介護福祉士の平均年収や月収、さらに手取り額の目安について解説します。
ただし、参考としているデータの多くは「介護職員等特定処遇改善加算」を取得している介護施設に基づいており、加算がない事業所と比べてやや高めに算出されている可能性がある点にご留意ください。実際の給料相場は、勤務先や勤続年数、役職などによっても変動します。
1-1.介護福祉士の額面給料
額面給料とは、基本給に加えて各種手当(通勤手当・残業手当など)を含んだ総支給額のことを指します。給与明細では「総支給額」として表示される金額であり、ここから税金や社会保険料などを差し引いた額が手取りになります。
求人情報や面接で提示される給与は、基本的にこの「額面」であることを覚えておきましょう。厚生労働省の「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果」によれば、介護福祉士の平均月額の額面給料は約350,050円とされています。年収換算すると約420万円となり、国家資格としての価値が反映された水準と言えるでしょう。
1-2.介護福祉士の手取り
手取りとは、額面給料から所得税・住民税・健康保険・厚生年金・雇用保険などの各種控除を引いた後の金額です。一般的に、手取りは額面の約75~85%程度になるとされています。
厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果」の介護福祉士の平均額面給料をもとに手取り額を算出すると、下記のようになります。
支給割合 | 手取り額(概算) |
---|---|
75% | 約262,537円 |
80% | 約280,040円 |
85% | 約297,542円 |
また、介護福祉士の給料の参考値として介護士の平均月収を年齢別にみると、20代男性では約316,190円、女性では約305,560円と報告されています。
手取り換算では、男性が約237,000円~269,000円、女性が約229,000円~260,000円程度です。扶養の有無や控除額によって手取りは異なりますが、おおまかな目安として理解しておくとよいでしょう。
2.【比較】介護福祉士の給料と手取り
ここからは、保有資格の種類や働く施設の違い、資格の有無などによって、収入にはどのような差があるのかを具体的なデータをもとに解説します。資格取得の重要性を検討する際の参考にしてください。
2-1.保有資格の種類別|給料と手取り
介護の仕事では、保有している資格によって平均給料や手取り額が大きく異なります。厚生労働省の「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果」を基に、保有資格の種類ごとの平均給与額をまとめました。
【介護の資格区分別の平均給与額と手取り】
資格区分 | 平均給与額(額面) | 75%手取り額 | 80%手取り額 | 85%手取り額 |
---|---|---|---|---|
介護福祉士 | 約350,050円 | 約262,537円 | 約280,040円 | 約297,542円 |
社会福祉士 | 約397,620円 | 約298,215円 | 約318,096円 | 約337,977円 |
介護支援専門員 (ケアマネジャー) | 約388,080円 | 約291,060円 | 約310,464円 | 約329,868円 |
実務者研修 | 約327,260円 | 約245,445円 | 約261,808円 | 約278,171円 |
介護職員初任者研修 | 約324,830円 | 約243,623円 | 約259,864円 | 約276,106円 |
社会福祉士では約397,620円の額面に対し、手取りは約298,215円~337,977円です。初任者研修や実務者研修でも月給は32万円台となり、資格を重ねるごとに収入は着実に上がるでしょう。
中でも介護福祉士は、国家資格として安定した評価があり、額面は約350,050円です。月25万円~29万円台の手取りが期待でき、キャリアの軸として人気の高い資格です。
2-2.介護事業所別|介護福祉士の給料と手取り
介護福祉士の給料は、働く事業所の種類によっても大きく変わります。介護事業所別の介護福祉士の平均給与額と手取りは下記の通りです。
【介護福祉士の平均給与額と手取り】
介護事業所 | 平均給与額(額面) | 75%手取り額 | 80%手取り額 | 85%手取り額 |
---|---|---|---|---|
全体 | 約350,050円 | 約262,537円 | 約280,040円 | 約297,542円 |
介護老人福祉施設 | 約372,960円 | 約279,720円 | 約298,368円 | 約317,016円 |
介護老人保健施設 | 約363,550円 | 約272,662円 | 約290,840円 | 約308,017円 |
介護医療院 | 約340,420円 | 約255,315円 | 約272,336円 | 約289,357円 |
訪問介護事業所 | 約355,790円 | 約266,842円 | 約284,632円 | 約302,422円 |
通所介護事業所 | 約304,850円 | 約228,638円 | 約243,880円 | 約259,123円 |
小規模多機能型居宅介護事業所 | 約317,640円 | 約238,230円 | 約254,112円 | 約269,994円 |
認知症対応型共同生活介護事業所 | 約315,600円 | 約236,700円 | 約252,480円 | 約268,260円 |
たとえば、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)では、介護福祉士の平均月給が約372,960円と最も高く、手取り額は約279,000円~317,000円ほどと見込まれます。老健(介護老人保健施設)や訪問介護事業所も額面で35万円台と高めで、手取りもおおよそ26万円~30万円程度です。一方、通所介護(デイサービス)は約304,850円とやや低めで、手取りは22万~26万円前後にとどまります。
施設形態によって勤務内容や手当のつき方が異なるため、転職や就職の際は収入面も含めて比較検討するのがおすすめです。
2-3.資格の有無別|給料と手取り
介護職においては、資格の有無によって給料と手取り額に大きな差が出ます。厚生労働省の「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、資格がある人、資格がない人の平均月給は下記の通りです。
平均給与額(額面) | 75%手取り額 | 80%手取り額 | 85%手取り額 | |
---|---|---|---|---|
保有資格あり(全体) | 約339,960円 | 約254,970円 | 約271,968円 | 約288,966円 |
保有資格なし | 約290,620円 | 約217,965円 | 約232,496円 | 約247,027円 |
介護資格の有無による差は、手取りベースでおよそ3万円以上です。資格の有無が収入に直結するため、安定した生活やキャリアアップを目指すなら、資格取得は大きな意味を持ちます。
3.介護福祉士にはボーナスがある?
介護福祉士のボーナス支給は、法律で義務づけられているものではなく、勤務先の方針によって有無が分かれます。厚生労働省が公開する「令和6年 賃金構造基本統計調査」によれば、医療・福祉施設等に勤務する介護職員の年間賞与(その他特別給与額)は平均508,300円でした。
出典:政府統計の総合窓口「賃金構造基本統計調査 / 令和6年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種」
ただしこれは統計上の平均であり、すべての事業所が該当するわけではありません。ボーナスが支給されない施設では、代わりに資格手当や夜勤手当として月収に反映されている場合もあります。
4.介護福祉士の給料・手取りを増やす方法は?
ここからは、介護福祉士として働く中で、給料アップや手取りを増やすための具体的な方法を紹介します。手当の活用や上位資格の取得、転職による環境改善など、収入アップにつながる現実的な手段を順に見ていきましょう。
4-1.手当を増やす
介護福祉士の収入を増やすには、各種手当の活用が効果的です。代表的な夜勤手当は、1回あたり約5,000~8,000円が支給され、月4~5回入るだけでも大きな収入アップが見込めます。また、年末年始に出勤すると支給される手当や、リーダーや主任などの役職手当もあります。
役職は業界経験やスキルで評価されるため、異業種からの転職でも十分チャンスがあります。基本給に加え、手当を積極的に活用することで手取り額を着実に増やせるでしょう。
4-2.ケアマネジャーなどの上位資格を取得する
介護福祉士として働く中で、さらなる収入アップを目指すなら、ケアマネジャー(介護支援専門員)などの上位資格の取得を検討するのがおすすめです。ケアマネジャーは、介護サービスの計画を立てる専門職であり、直接介護を行わない分、身体的負担が少なく、平均給与も介護福祉士より約3万~4万円高い傾向にあります。
ケアマネジャーの資格は、実務研修受講試験に合格し、研修を修了後、各都道府県の名簿に登録することで取得できます。試験を受けるには、福祉・医療系の法定資格を持ち、対人援助業務の実務経験が5年以上かつ900日以上あることなど、一定の条件が必要です。
4-3.待遇の良い施設に転職する
介護福祉士としての給料や手取りを増やしたいなら、待遇の良い施設への転職も有効な手段です。大規模な特別養護老人ホームや介護老人保健施設など、安定した運営を行う法人では、給与水準も比較的高くなる傾向にあります。
転職を考える際は、手当の種類や賞与の実績、勤務時間、残業の有無などを事前に確認し、今の職場との違いを比較することが大切です。介護業界では、賃金改善や労働環境の整備も進んでおり、経験を積めばキャリアアップも狙いやすい分野です。転職先を選ぶ際は、収入と働きやすさの両方を見極めましょう。