コラム
クラークとは?種類や仕事内容・給料・資格の有無を分かりやすく紹介
医師や看護師だけでなく、医療現場には患者さんを支えるさまざまな職種があります。そのうちの1つが「クラーク」という仕事です。クラークの仕事内容は患者さんの入退院手続きやカルテの管理、診断書作成補助など多岐にわたり、医療事務や看護助手とは異なる役割を担います。
当記事では、クラークの仕事内容や魅力、他職種との違い、給料面や役立つ資格について分かりやすく紹介します。
1.クラークとは
クラークとは、病院の病棟や外来部門で医師や看護師の事務作業をサポートするスタッフのことです。「クラーク(clerk)」は英語で「事務員」という意味です。
例えば、入院病棟のナースステーションに常駐し、入退院に関する手続きや電話対応、カルテ管理などを行い、医師・看護師が治療や看護に専念できるよう支えるのがクラークの仕事の1つです。クラークになるために特別な国家資格は必要ありませんが、一般的には医療用語やPCスキルなど事務能力が求められるため、関連する資格を持っていると就職に有利です。
1-1.医療事務との違い
医療事務は、病院の外来受付で患者さんの対応や会計業務を行い、診療報酬明細書(レセプト)を作成するなど、会計・保険請求に関わる事務を担当するのが主な仕事です。
一方、クラークは会計業務やレセプト作成は基本的に行わず、病棟内での事務作業や医師・看護師のサポート業務が中心です。
1-2.看護助手との違い
看護助手は看護師の業務を補助するスタッフで、患者さんの食事・入浴・更衣の介助や、ベッドメイキング、医療器具の洗浄・消毒など身体介助や雑務が中心です。
看護助手もクラークも医療行為自体は行えませんが、看護助手は患者さんの身の回りのお世話が主な役割であり、事務作業は基本的に行いません。一方でクラークは、入退院手続きやカルテ管理、他部署との連絡調整など事務作業が中心です。
2.クラークの種類
一口にクラークと言っても、働く部署やサポートする対象によっていくつかの種類があります。
以下では、看護師をサポートする「病棟クラーク・小児クラーク」と、医師をサポートする「医師事務作業補助者(医療クラーク/ドクターズクラーク)」の2種類に分けて紹介します。
2-1.病棟クラーク・小児クラーク
病棟クラークは、入院患者さんがいる病棟で勤務し、ナースステーションに常駐して事務作業全般を担当するクラークです。入院患者さんの入退院に関する書類作成や病室の手配、病棟内の物品管理など、病棟で発生するさまざまな事務業務を受け持ちます。
一方、小児クラークは病棟クラークの中でも小児科の病棟に特化したクラークです。基本的な業務内容は病棟クラークと大きく変わりませんが、対象が小さな子どもである点が特徴です。小児病棟では子どもたちが不安にならないよう優しく声をかけたり、保護者への説明を丁寧に行ったりと、子どもと接する心得やコミュニケーションスキルが求められます。
2-2.医師事務作業補助者(医療クラーク)
医師事務作業補助者は、別名「医療クラーク」や「ドクターズクラーク」とも呼ばれ、医師の事務作業を専門にサポートするクラークです。2008年の診療報酬改定で新設された「医師事務作業補助体制加算」により病院に配置が進んだ職種で、医師の負担軽減を目的として生まれました。
具体的には、本来は医師が行う診断書や紹介状など文書の作成や、電子カルテへの記載、検査や処方のオーダー入力などを代行します。医師事務作業補助者は医師からの指示の下で業務を行う点が他のクラークと異なり、患者さんやご家族への直接対応は基本的に行いません。
あくまで医師の秘書的存在として、医師が診療に専念できるよう書類作成やデータ入力に特化してサポートするのが役割です。
3.クラークの仕事内容
クラークの仕事内容は勤務先や担当によって多少異なるものの、共通しているのは「医療スタッフの補助」と「事務作業」を担う点です。
ここでは、病棟クラーク・小児クラークと医療クラークそれぞれの代表的な業務内容を紹介します。
3-1.病棟クラーク・小児クラークの仕事内容
病棟クラーク・小児クラークの主な仕事内容は次の通りです。
- 入退院に関する手続き対応
- 患者さんのカルテや看護記録、検査伝票など各種データを整理・管理
- 病棟内の連絡調整
- ナースコール対応や電話の取次ぎ
- 病棟で使用する医療器材や消耗品の在庫の管理、不足があれば補充や発注
- 病室のネームプレート作成・管理、使用後の器材やベッド周りの簡単な片付けなど環境整備
入院の受付準備や退院時の書類作成、病室への案内など、患者さんの入退院手続きをサポートします。また、他の診療科や検査部門との連絡を取り次ぎ、検査予約の調整や処置の連絡なども行います。
小児クラークの場合は上記業務に加え、小児患者さんへの対応も重要な業務です。例えば、診察を待つ子どもにアンケート形式の簡単な問診票を書いてもらうお手伝いをしたり、使用後のおもちゃを片付けたりします。
3-2.医療クラークの仕事内容
医療クラーク(医師事務作業補助者)の主な仕事内容は以下の通りです。医師の指示の下、診療行為以外の業務を中心に担当します。
- 診断書・紹介状・同意書・退院サマリーなど、医師が作成すべき各種文書の下書きや代行入力
- 診療中に医師の代わりに電子カルテへ患者さんの情報や所見を入力
- 医師の指示に基づき、検査・処方・処置などのオーダー内容をシステムに入力
- 医療機関が行政に提出するデータ入力
- 医師の学会発表資料やカンファレンス資料の作成
- 補助、診療記録の統計整理、医局内の事務作業全般など、医師の業務量軽減につながる雑務
文書作成の補助や代行入力については、最終的に医師が内容を確認・署名します。患者さんへの直接対応は少ないですが、医師を陰で支える重要なポジションです。
4.クラークの給料
クラークの給料(給与水準)は勤務先の規模や地域、経験年数によって幅がありますが、概ね医療事務と同程度かやや高い水準です。具体的には、年収相場は420万円程度とされています。
出典:中央社会保険医療協議会「第24回医療経済実態調査 (医療機関等調査) 報告」
新人や未経験からスタートする場合は年収300万円台前半からのことも多く、反対に経験を積んで役職に就けば年収500万円を超えるケースもあります。いずれにせよ、クラークの給与は一般的な事務職と比べて大きな差はなく、勤務先の規定や自身のスキル次第で上下する点は認識しておきましょう。
5.クラークになるには資格が必要?
クラークとして働くために必須の資格はありません。実際、未経験・無資格で募集している医療機関も多く、働きながら知識を身につけていくことも可能です。
とは言え、医療現場で活躍するには専門知識や事務スキルがあるに越したことはありません。クラークに役立つ主な資格は以下の通りです。
- 医療秘書技能検定試験
- 医事コンピュータ技能検定試験
- 医療事務技能審査試験(メディカルクラーク)
- 診療報酬請求事務能力認定試験
- 医療事務技能認定試験
- 医師事務作業補助技能認定試験(ドクターズクラーク)
など
これらの資格を取得しておくことで、医療機関への就職活動でアピールできるほか、配属後も業務をスムーズに習得しやすくなります。特に医師事務作業補助者を目指す場合は関連資格の有無が採用判断に影響する場合もあるので、自分の目指す分野に合わせて資格の勉強をするとよいでしょう。